ドアを開けると赤司様がいました 200

「僕が、消える夢……?」
 征一郎は些か驚いているようだった。あの問題は解決したと思ったのに……それとも、オレの中ではまだトラウマとして残っているのだろうか……。
「光樹、光樹、しっかりしろ! それは夢だ! 僕はもう消えたりしない!」
「本当に……?」
「ああ、今から証拠を見せてやる」
 そして、征一郎はオレに口づけをした。征一郎の唇の味がする。半開きになっていたオレの唇に征一郎の舌がするりと入り込む。息が出来ない。――深く、激しいキス。
 激情に流されそうだ……。征一郎は、口づけも上手い。――征十郎も、上手かった。
 ここで、征一郎と征十郎を比べても仕様がないけれど――。
「ん、ん……」
「ほうら、ね? 今から消えるという男が、こんなキスをする訳ないだろう。――征十郎。下は任せる。上は僕に任せてくれ」
「わかった」
 そう言うと、征十郎がオレのモノをぱくりとくわえた。
「あ、ああっ……」
 ほんと言うと、オレは恥ずかしくて、早く止めて欲しかった。でも、本当に、早く止めて欲しかったかと言うと――自信ない。征十郎は、オレが達しそうになると、ふい、と別のところをつつく。
 ああ、頭のヒューズが吹っ飛びそうだ。ヒューズなんて見たことないけれど。
 オレは二人の赤司に翻弄されるしかないんだろうか――。征一郎が、ちゅっとオレの頬にキスをした。
「征十郎。何だか光樹が辛そうだぞ。――早く抜いてやれ」
「まぁ、待て……オレを求める光樹も可愛いね」
 そして、征十郎はオレの双袋を舐めた。ひゃっ、くすぐったい。おかげで少し萎えた。征十郎はくすくす笑った。
「本当に、反応が可愛いね。光樹は――」
 可愛くなくていい! 早く楽にさせてくれ!
 でも――征十郎は下半身を舐め回す。征一郎も負けじと口内を刺激する。
「う……あ……あ……」
 オレは、拙いながらも征一郎のキスに応える。というか、征一郎、キス上手いな。こんなキスを、誰か他の人としたんだろうか――。征十郎は初めてではないだろうなと思うけれど、征一郎は……。
 あの時はまだ高校生だったし、征一郎だってバスケ馬鹿だと思ってたから。
 もしかして、根っからの好きものなんだろうか。征一郎も。――と思っちゃ、征一郎に悪いんだろうな。征一郎の健康な匂いのする吐息。
 ああ、もうすぐ限界かも……。
「あ、うあああっ!」
 オレは征十郎の口の中に精を放った。青臭い匂いが広がるかも――と思ったが、そうでもなかった。……征十郎が殆ど飲んでしまったからである。
「うん、相変わらず美味しいよ。光樹」
 んな訳ねぇだろ。オレの精液なんて不味いものに決まってる! ――オレはオレの精液の味なんか知らないけど。それに美味しいといえば、征十郎の精液の方が――。
 い、いや、何でもない! そう、何でもないんだ!
「光樹……僕のこともイかせてくれないかい? ……ああ、でも、今は征十郎がいるんだったね……」
 征一郎がイケボで囁いた。
「征一郎……」
「あ、オレだったら、征一郎に光樹を譲ってもいいな。……他の人だったら譲らないけどな」
「ありがとう、征十郎。でも、光樹はどう思っているかな。ねぇ、光樹。僕に抱かれてもいいと思うかい?」
 オレは、少し考えてそれから、
「いいよ……」
 と、喘いだせいで掠れた声で喋った。
 オレも、他の男だったら嫌だけど、赤司達だったら、いい……。
 征一郎は速攻、オレの唇にキスをした。征十郎が、征一郎の為にスペースを作った。そして、傍に陣取る。――何だろう。征十郎。どういうつもりなのかな。オレと征一郎が交わっているところを見たいのかな。
 それはちょっと……恥ずかしいなぁ……。でも、見ているのは征十郎だけだから……。
 征一郎は熱いキスをオレに送ってくれた。そして、立ち上がると、ローションを指で温めて、オレの出入口をほぐした。
 何だろう……この感じ……。
 オレのモノはギンギンに昂っていた。今、出したばかりだと言うのに……。オレも溜まってたんだな……。
 征十郎の方を見ると、彼は澄まして微笑みを見せていた。ランプの灯りが彼の綺麗な顔を彩る。
「さぁ、こっちを向いて。光樹――征十郎に見せつけてやろうじゃないか……僕達の愛を」
 征一郎を愛している。けれどオレは……征十郎のことも愛しているんだ……。征十郎はオレの最初の男だもんね。忘れる訳がないよ……。ずっとずっと、征十郎が穿った穴は塞がれることはないよ……。
 ああ、でも……征一郎の愛撫は征十郎のに似ている。囁く声も、入り込んだペニスも。
 ――いつの間にか、征十郎がいなくなっていた。
「……征十郎!」
「光樹!」
「征十郎、征十郎! ……あっ!」
 暴れたおかげで、征一郎のモノがオレの中のいいところに触れた。それで、オレはつい喘いでしまった。征一郎がキスをする。噛みつくようなキス。
 征一郎は、何でこんなキスをするんだろう。――それは、ヤってる最中に他の男の名前を叫んだとは言え……。
 ――そうか。だからか。
 征十郎と征一郎。同じ人物から分かれたとは言え、征十郎の名を呼ばれたら、征一郎だっていい気持ちはしないだろうな……オレだって、そのぐらい考えつくもの。
「はあっ、はぁっ、はぁっ……」
「光樹――」
 征一郎は優しい声で呼ぶ。
「征十郎のことが、好きか?」
「――うん」
「じゃあ、僕のことは、好きか?」
「――好きだよ」
「……嘘ついてるようでもなさそうだな。光樹に嘘はつけない。ついてもすぐバレてしまうような嘘だ。光樹は嘘をつける程、器用な人間じゃないもんな」
 征一郎のヤツ、オレを馬鹿にしてるのか?
「そう言う征一郎は、嫌いだ」
「ああ、今は、怒ってるな。――オマエが、征十郎を想っていても構わない。だが今は……最後までイかせてくれ」
「うん……」
「オマエの中に僕を注ぎ込みたい。もし、オマエが女だったら、孕ませることも出来るのに――僕が出来ない唯一のことだね」
「征一郎、何言って……んあっ!」
 オレは征一郎に体勢を無理やり変えさせられた。
「征一郎、征一郎……」
「光樹……今は、僕だけを見るんだ……」
 征一郎のオッドアイがオレを見据えているのがわかる。征一郎の姿がランプに照らされてわかる。征一郎のオッドアイ――美しい……。
 オレは、征一郎の愛撫に溺れる。ああ、征一郎……。
 オレは、征一郎と征十郎のどちらが好きなんだろう……自分でも、わからない。
 ただ、今、オレは征一郎の愛撫に夢中で、しかも、まだ征十郎のことを考えているということだ。
 征一郎は、こんな愛撫をどこで覚えて来たんだろう。――チートだから、何でも出来るのかな。
 征十郎も……あいつ、どこへ行ったんだろう……。……トイレかな。トイレに抜きに行ったのかな。オレが征十郎だったらそうしているだろうからだ。オレも、この一年征十郎と付き合って来た。だから、征十郎の行動は、わかる。
 それにしても――。
「ああ、ああ……征一郎……」
 オレは、征十郎のこともすぐに忘れた。今は、征一郎のことだけを考えていたい。
 ――だから、征十郎は逃げたのだ。征一郎に夢中なオレを見たくないから……。
 オレはフツメンかもしれない。つまんないヤツかもしれない。だけど、征一郎も征十郎も、オレのことを愛しているんだとは思う。こんな取り柄のないオレのどこに惹かれたのかわからないけれど――。
 自分が自意識過剰だとは思わない。だって、征一郎は、こんなにオレを気持ち良くさせてくれる。オレを満足させてくれている。
 征十郎だってそうだ。本当に、オレみたいなつまらない男に何で惚れたのかわからないけれど。オレは赤司征十郎じゃない。征一郎でもない。
「うあっ!」
 オレは――またイきそうになった。確かに出してからしばらくは経っているけれど……。
 これじゃ、オレの体がもたないよ。全く……。
「……征一郎……」
「……何だ?」
「アンタとのセックスで……オレの体、壊れかけてる……」
「そのつもりでやっているんだ。でも――オマエの体が壊れたら、オレもつまらないな……それに、バスケも出来なくなる……」
「バスケ……?」
「そうだ、バスケだ。オマエにアンクルブレイクを教えてやる約束をしただろう」
「――オレ、アンクルブレイクには興味ないよ」
 征一郎が動いた。……うっ、いいところに当たる……。
「僕はオマエがアンクルブレイクをしているところを見てみたいな。例えば、有山や征十郎が、オマエに跪くところを見てみたい……」

後書き
今回は18禁です。
征一郎と言うのは、僕司様のことです。
2021.08.10

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