ちびたりあ小話2

 オーストリアとイタリアが、居間のソファに座って、何かを見ながら、ニコニコ――というか、ニヨニヨしている。
「どうしたんですか。二人とも。薄笑いなんか浮かべて」
 不審そうにハンガリーが訊いた。
「あ、ハンガリーさん。写真見てたの」
「写真……? あーっ!」
 それは、ハンガリーが子供のときの写真だった。
「恥ずかしいからやめてください!」
 ハンガリーは、イタリアからバッと写真を引ったくって丸めた。
「ハンガリーさん、すごくかっこいい」
 イタリアは、開いているんだか閉じているんだかわからない目で、ハンガリーに笑いかけた。この無邪気な幼児は、思ったままを口にする。
「やめてください、やめてください!」
 それは、今の彼女からは想像もつかない、泥だらけの子供である。とても……おてんばだったんだろうなということは、想像に難くない。
「ああ……ふふっ、かっこいいか……」
(わ、笑ってる、オーストリアさんまでッ)
「もう、からかわないでください。昔のことですよ!」
「ええ。そうですね。わかりました。このことにはあまり触れないようにしましょう」
「わ……私、お茶淹れてきますッ!」
 ハンガリーは席を外した。
「もう……どうしてあんなものが残っていたのよ! 全部捨てたはずなのに!」
 ぽこぽことハンガリーは怒っている。
 取り敢えず、少し早いがティータイムにして、落ち着こうと思った。
 お茶を注ぐ音といい匂いが辺りの空間に広がる。
 オーストリアも大好きな、美味しいハーブティー。
 ああ、世界は今日も平和だ。
 日差しの当たる部屋。陽光に包まれていたら、少し穏やかな気分になれた。
 そういえば――あの頃はまだ、自分は男だと思い込んでいたっけ。
 喧嘩友達もいた。どんなヤツだか忘れてしまったが。
 お茶を淹れ終わった後、ハンガリーは写真を広げて、懐かしそうに見つめた。
 もう、今では思い出でしかないけれど。
(ま、これだけはとっときましょ)
 ハンガリーは写真をポケットに入れた。
 ――それ以上は深く追求することを止めて。

 だって、あの時も、確かにいい思い出だったんだから。

後書き
忘れられているプロイセンが可哀想過ぎる……。
2009.6.1


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