ちびたりあ小話

※ちびたりあ小話、というタイトルですが、ちびたりあはあまり出てきません。あしからず。

「おい、イタリア」
「何だよ、神聖ローマ。掃除中だぞ」
「掃除……? これが……?」
 部屋の中は前よりめちゃくちゃになっていた。
「う、うるせぇな! 何の用だよ」
「そうそう。一緒に絵を描きたいと思ってな……」
「絵か。まぁ、気分転換にはちょうどいいかもな」
 こうして、二人は連れ立って草原へと向かった。
「けっこういろんな動物がいるなぁ」
「今回は羊を描こうと思う。イタリア、手伝ってくれ」
「おー」
「む……上手く描けんな……イタリア……」
 神聖ローマは、ぐいぐいと相手に近付いて行く。
「こ、こら、神聖ローマ……何ひっついて来てんだよ! 暑苦しいんだよ! 馬鹿ッ!」
 暑苦しいんだよ、馬鹿、暑苦しいんだよ、馬鹿、暑苦しいんだよ、馬鹿……(←エコー)
「くっ……」
 神聖ローマは、悔しさをこらえて走り去った。
(あんな奴……イタリアじゃない……イタリアはもっと優しくて可愛いし……)
 神聖ローマは人知れず、すんすんと泣いた。
(――イタリア、いつもと違う……いつもと……あれ?)
 今日のイタリア、変じゃなかったか?
 例えば、巻き毛の位置とか。
 いつもはこう。



 で、今日はこう。



(待てよ、あいつ、あいつ――)

「やれやれ、神聖ローマのヤツ、どこ行ったんだ……?」
「ロマーノーーーーーーーーーー!」
 猛スピードで神聖ローマが向かってきた。
「げっ! 戻ってきた!」
「おまえ、イタリアのふりして、俺の純情踏みにじったりしてーーー!」
「はぁ? わけのわからないこと言ってんじゃねぇよ!」
「本物のイタリアはどこだ!」
「スペインのとこだよ! あの野郎が、『今日だけイタちゃんきょうだい取りかえっこせぇへん?』なんて言ったから!」
「な、なんと……?」
「ちなみにオーストリアも了承済みだぜ」
「オーストリアまで……」
 神聖ローマは、ショックでふらっとなった。
「じゃ、俺、飽きたからハンガリーのところへ遊びに行ってくっか。――お、そうだ。神聖ローマ」
「は?」
「あんな馬鹿でもヴェネチアーノは俺の子分だ。泣かせたりしたら、許さないからな」
「――言われなくても、わかってるよ」
 神聖ローマは、力強く頷いた。
 ロマーノが去った後も、神聖ローマは草原で風に吹かれていた。マントがはたはたと翻る。
 明日になったら、イタリアが帰ってくる。
 今だけは……一人でこの風に身を委ねていよう。

後書き
イラストのちびたりあ、青年イタリアっぽくなってしまいました(汗)。
草原に佇む神聖ローマは『はなれていても』の動画サイトさんをイメージしました。
2009.5.27


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