daisukiなんだぞ☆ アメリカが喫茶店に入ると、どこかで見た顔の青年が、メイド服を着てネコ耳をつけていた。 もしかしてもしかすると―― 「ハロー。イギリスじゃないか♪」 「ゲッ! アメリカ!」 「どうしたんだい? その格好は」 「べ……別に何でもないよ。それより、注文は決まったか?」 「うん。君をいただきたいね☆」 アメリカはイギリスを指差した。 「……からかってんのか?」 「うんにゃ」 次の瞬間、アメリカはイギリスの持っていた水差しからバシャーンと氷水を浴びせられた。 「ふざけんな! 馬鹿野郎!」 この水、あんまり冷たくないな――とアメリカは思った。それもそのはず。これは―― 「なんだ、夢か」 現実に戻ったアメリカが「ふぁ~あ」と伸びをする。 「でも、目の保養になったなぁ……いい夢見ちゃった」 そして、アメリカはがさごそと再びベッドにもぐり込む。 イギリスとフランスが、イギリスの家で紅茶を飲んでいた。彼らは仲は悪いが、そういう時を持つこともある。 傍から見れば、それは平和な会談だったはずなのだが―― 「フランスめ! またイギリスに手を出して!」 アメリカが、(本人にしてみればものすごくかっこよく)バターンと扉を開けた。 「あれ? アメリカじゃね?」 「何しに来たんだ?」 「フランスめ! おまえを成敗する!」 「なんだぁ? 何のつもりだぁ?」 フランスが間延びした声で言う。アメリカはこう答えた。 「正義の味方のヒーローさ!」 「はぁ……?」 フランスが状況を飲み込めないでいると、アメリカが彼にコブラツイストをかけた。 「いてて……いていて。やめろよ、アメリカ……」 フランスが「降参、降参」と告げると、アメリカは彼の体を解放した。 「さぁ、イギリス! 俺と一緒に逃げよう! HAHAHA そんなお礼なんて気にすること――」 フランスがやられている間に、イギリスはどこへともなく去っていた。 「イギリス……お礼も言わないで消えるなんて、なんて奥ゆかしいんだ。恥ずかしがらなくてもいいのに……」 アメリカのハートがキュン、となった。 「いてー……」 とそばに転がっているフランスは無視である。 なんなんだ? 今の夢。訳わからない。 寝直そう。まだ時間はあるし。 「アメリカ……大きくなったな」 「うん。君と同じくらいにね」 アメリカは、子供の頃はイギリスも自分と同じように大きくなるものだとばかり考えていたが、どうやらあれでストップらしい。 「背伸びしなくても、しゃがまれなくても、君にキスすることができるようになったよ」 それを聞いて、イギリスの頬が心なしか赤くなった。 「ああ……うん」 「試してみるかい?」 「そうだな……じゃあ一回だけ」 「一回と言わず、何回だってしてあげるよ」 「一回でいい」 イギリスが目をつぶる。可愛い。 アメリカとイギリス。二つの唇の距離が近付いていく。10センチ……5センチ……10ミリ……。 ジリリリリリリッ! 「うわぁッ!」 アメリカがベッドからずり落ちた。 「何だよ! せっかくいいとこだったのに!」 時計を床に叩きつけて壊した。なお、この時計はドイツ製で、この間壊れた時、日本が修理したという、ちょっとしたレア物なのだが。 「こうなるんだったら、さっさとキスするんだったよ」 アメリカはむくれている。――が。 「そうだ。今日は会議がある。イギリスに会えるぞー」 アメリカは立ち直りが早い。早速着替えを始めた。 「イギリスー。おは……」 会議室のある建物の廊下で出会った人物に、アメリカは愛想良く挨拶した。 ところが、イギリスには、ぎっと睨まれた。 息を飲んで、アメリカは、いつもより機嫌の悪そうな想い人の後ろ姿を眺めていた。 「な……何があったんだろう……イギリス……」 まぁ、ご機嫌斜めなのも無理ないかもしれない。イギリスは夕べ、アメリカにコケにされた夢と、アメリカに醜態をさらした夢、そして独立戦争の時の夢を続けて見たのだから――。 「な……そんなことがあったのかい?」 そうなんです。 「道理でおかしいと思った!」 そう……それに、独立戦争といえば、イギリスには、一番触れられたくないとこだろうしねぇ……。 「こんの~……君は変な話ばかり作るんだから! そうだ! こうしちゃいられない!」 どこへ行くの? 「まずイギリスの気分を直して、それからまたいじめ――いや、可愛がってあげるのさ!」 やれやれ。再びいじめるんだったら、筆者の物語にケチをつけないで欲しいなぁ……。 なお、アメリカがイギリスに銃口を向けられることになるのは、そう遠い先のことではない。 でも――多分、どんな目に合っても、アメリカだったらこう言うはず。 俺はイギリス、君のことがdaisukiなんだぞ☆ 後書き また変な話を書いてしまった……(笑)。アメリカの性格が全然違います。 しかも、筆者と言う変な存在まで出てくるし。 米英好きなんですよ。イギリスが可愛いです。アメリカも可愛いけど。 フランスいじめはいつものことですが、フランス兄ちゃんもちゃんと好きですよ、私。 2009.12.20 |