愛しのイギリスへ

 好きで。
 好きでたまらないくらい好きで。
 眠れない夜を過ごした。
 イギリス――アーサー・カークランド。君のせいだ。
 夜眠ることができない俺、アメリカは――昼間眠っていたりする。

 いつ、イギリスに恋していることを知っただろう……。
 あんまり昔過ぎて忘れた。
 もしかして、子供の頃からだったかな?
 フランスと君、どっちが俺の弟か、決めようとしたんだろ?
 今なら、そんなバカげたことを、と笑うとこなんだけどさ。
 あの時、イギリス、あんまりしょげてたから、ちびだった俺は慰めに行ったんだっけ。
 思えばそれが、俺の人生を決めた――。

 不必要なくらい太い眉毛も、ボサボサの金髪も、吸い込まれそうな緑色の瞳も。
 全てが好きだった。

 でも、イギリス、君には俺にとって理解できないところもある。
 君には、見えないものが見えるようだね。
 俺にも宇宙人の友達がいるけどさ。
 それからもうひとつ。なんで頭にハンバーガーを乗せても熱が下がらないんだい?
 俺だったら、元気になってるとこなんだけどな。
 物食いながら喋るな、何言ってんだかわからないっていうのも、君がバカだからじゃないかなぁ。
 あ、それから、君、絵下手だよね。
 この間ついつい我慢ができなくなって、芸術センス光る俺の絵を披露してしまったよ。

 イギリスからもらった物、おもちゃの兵隊も、服も、全部捨てられない。
 捨てようと思ったのに、捨てられない。
 こんなガラクタ、君がくれたのでなけりゃ、とっといたりするものか!

 俺はイギリスの『弟』と言うことになった。
 俺もイギリスも国だから、イギリスと血の繋がりは、ない。
 けれど、俺は、それで満足していたはずだったんだ。

 弟と言う立場に物足りなくなったのはいつからだろう。
 俺が猛スピードで成長したあたりか?
 少しでも、イギリスに近づきたくて。
 フランスにイギリスを取られたくなくて。
 だから、俺は大国になった。イギリスのヒーローになりたくて。
 もっと俺を見て。弟としてじゃなくてさ。
 一人前になるために、イギリス、君から独立した。
 俺はイギリスと同じくらい――いや、イギリスより身長も高くなった。
 イギリス……あんなに大きかったのにな……。
 でも、俺は君に釣り合う男になったんだ。
 知的に見えるように、伊達眼鏡をかけてみたよ。
 君には「似あわねぇ」と言われたね。そんな言葉ぶつけるのも、俺への親愛の情だと思ったさ。
 君は素直でないからね。ふふ。

 イギリス、独立戦争の時は、俺を撃たないでくれたね。
 君も俺のこと好きだったんだと、うぬぼれてもいいかな?
 たとえ、『弟』としてでもね。
 今でも肝心な時は、『弟』としての地位をフルに利用することに決めたよ。 
 泣いてた君は――そう言うと怒るかもしれないけど――とても美しかった。戦いで泥まみれだったけど。

 イギリス。君は俺と友達になりたいって言ったよね。
 あの時、俺は「やーなこった」と言ったけど、本当は――
 本当はものすごく嬉しかった。
 けれど、俺は、『友達』より『恋人』になりたかったんだ。

 イギリス、君の口の悪いところも好きだ。
 ケンカ売ってばかりだけど、俺は君を愛してるよ。間違いなく。
 君が死にそうになった時、「俺のこと嫌いじゃない」と言ってくれたね。多分、それが君の精いっぱいの愛情表現なんだろうな。
 ま、死神とお祝いしようと言った時、すぐ起き上ったけれどね、君は。もしかして不死身かい?
 どうでもいいけど、借金は返してくれよ。

 俺は君のことをもっともっとよく知りたい。君の恋人だった――フランスにも負けないくらい。
 あは。俺が気付いてないとでも思ってた?
 君とフランスの仲もとっくにわかってたよ。
 ま、それで恋心が消えたわけではないけどさ。かえって闘志が湧いたぐらい。

 俺が誕生日を迎えた時、君は酒場で一人で飲んでたね。
 俺は君に会った時、言ったよね。
「ねぇ。アーサー。俺、二百歳になったよ」
 でも、君は、「何当たり前のことを言ってんだよ、バーカ」とてんから相手にしてくれなかったっけ。
 俺は日本に八つ当たりしたよ。
「君の教えてくれた口説き文句、全然効かなかったよ!」って。
 どうやらそれは、昔、日本で話題になったドラマのセリフだったみたいなんだけど。

 借り物の言葉ではなく、自分の本当の気持ちを正直に言わなくてはならないことをその時わかった。
 恋愛は一押し二押し、三四に押しで五にも押しだよね。
 俺はヒーローなんだから、フラれるわけがない。
 今度会った時、俺は君に言おう。

 アーサー・カークランド。君が好きだ。誰よりも。

後書き
ラブレターみたいな内容になってますが、これを受け取った人は、笑うか怒るかのどちらかだろうな。
原作を元にして書いたところもあるので、ヘタリア知っている人は、「ははあ、この部分はあのネタだな」と思うでしょう。
ちなみに、「ねぇ、アーサー、俺、二百歳になったよ」は、『悪魔のようなあいつ』からの有名なセリフのもじりです。ドラマは観たことありませんが。
この話、少しでも楽しんでくだされば幸いです。
2009.10.17

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