赤司様の愛、降旗クンの苦悩

「光樹、次どこへ行こうか?」
「どこでも……」
 オレ、降旗光樹はどういうわけか赤司征十郎に気に入られてしまったようだ。
 赤司征十郎。通称天帝赤司様。洛山高校バスケ部の主将。一年生であの強豪校の主将になったんだからすご過ぎる。元帝光中バスケ部の主将。
 このオレのどこがいいんだろう。機会がある度洛山に来ないかと誘われている。玲央もきっと君を気に入ると思うよ――とも。
 嫌だね。オレは誠凛が好きなんだ。オレは洛山なんかにゃ行かねぇよ。
「光樹。この服、君に似合いそうだよ」
「……派手過ぎやしないか?」
「そうか。君は気に入らないか」
 今、京都の赤司はオレと一緒に東京見物をしている。
 赤司は京都で独り暮らしをしているらしい。実家は東京だ。そこんところは、偉いな、と思う。赤司の年齢で独り暮らしとは。
 と、そこで。
 緑間と高尾の二人組にガッチンコ。
 ……何しに来てんだろ。こいつら。せっかくの日曜、男二人なんて。
 いや、オレも人のこと言えねぇけど。
「やぁ、真太郎」
 赤司が声をかけた。真太郎とは、緑間の下の名前だ。
「赤司。お前らこそ何しているのだよ」
「僕達はデートだよ。ね?」
 そう来やがりましたか、赤司さん!
 オレはデートだなんてちっとも思ってなかったんですけど。冗談ですよね! 冗談ですよね!
「奇遇だなぁ。実はオレ達もなんだよ」
「高尾!」
 緑間が焦る。もしかしてこいつら、ガチか?
「隣の相手は? もしかして降旗君」
 高尾が言う。うわー、しっかりバレてる。
「WCでの活躍、すごかったね」
 いえ、全然すごくないんですけど……。つか、対洛山戦の時には何にもできなくて……。
「和成。それ以上光樹に近づくな。光樹が怯えている」
 赤司、オレが怯えているのはアンタのせいもあるんですけど……。
「おー、オレの下の名前覚えてたんだ」
「それは、真太郎の恋人っていうから興味も湧いたしね」
「WCでの健闘で興味を持ってくれたんじゃないわけ」
「ああ。それもあるけど」
「ところで降旗君。赤司サンとの馴れ初めは? どこで?」
「あ、あの……」
 馴れ初めとか、男同士で言うこっちゃないと思うんだけど。
「ああ。僕と光樹の出会いかい? やはりWCだよ。あの時の僕を見つめる光樹は可愛かった……怯えた顔がまたそそったよ……。で、僕はこの少年を欲しいと思ったんだ」
 赤司がぺらぺらと喋りまくる。誰か助けて。
 つか、剥き出しの鋏持っていたら怖くて怯えるって!
 あん時火神が来てくれなければどうなっていたことか……。そんなことを考えるオレはやはりビビリかもしれないけれど。
(なぁ、赤司ってこういうキャラだっけ?)
(さぁ……オレにも赤司にはわからないことの方が多いのだよ)
 高尾と緑間はひそひそ声で話している。うんうん、そうだよね。赤司って謎だよね。
「じゃ、オレ達はここら辺で」
 そう言って離れて行った高尾達は実に空気を読んでいると思う。
「行ってしまったようだね。真太郎達」
「え……あ……うん……」
 赤司――こいつにはキセキの世代しか見えていないのだろうか。高尾のことなんて本当はアウト・オブ・眼中だったようだし。
 ……でも、緑間と高尾も恋人だなんて……まぁ、冗談なんだろうけど、世の中乱れてるな……。
「光樹、何してるんだい? 早く」
「は……はい!」
 オレは慌てて赤司についていった。
「光樹。本当に洛山に来る気はないのかい?」
「言ったでしょう。オレは誠凛が好きなんだって」
 赤司には位負けしているところがあるけど、オレだって自分なりの主張は、ある。
「やれやれ。怖がりなくせして手強いな。だから好きになったんだけど」
「…………」
「でも、諦めるつもりはないからね」
 ああ、神様、助けて!
「僕は光樹と一緒の学校に通いたかったな。そうだ、大学ならまだ間に合うね。僕は高校卒業したら留学しようと思ってたんだけれど、光樹の為なら日本に留まっていたっていいよ」
 いえ、是非とも海外へ羽ばたいてください!
「勿体ないよ! 赤司! 赤司ほどの人が日本なんかで燻ってちゃダメだって!」
 オレは必死になった。何せ、自分の将来がかかっているのだ。
 この先、赤司に今まで以上につきまとわれると思うと――ゾッとするじゃないか!
「本物の宝石は屑の中でも光るものさ」
 赤司は動じない。オレなんかも赤司にとっては屑だろうに。
 ちょっと聞きたいことがあるんだけど――。
「赤司……オレなんかのどこがいいの?」
「だから言っただろう。全部だって」
「いやぁ……具体的に」
「そうだな。洛山の選手を有利に働かせる為に君が欲しいな」
 つまりオレの弱過ぎるところが欲しいってわけか。
「簡単に靡かないところも気に入った」
「そりゃまぁ……オレが女の子だったら赤司に惚れてたかもしんないけど」
「ほんと?! 嬉しいな」
 赤司がぱっと顔を輝かせた。へぇ……こんな表情もできるんだ。
「でも、オレ男だから」
「赤司家の人間は常に勝利しなければ駄目なんだ。恋愛だって一緒さ」
「恋愛……」
 うわぁ! 寒イボが! 誰か助けてくれ~っ! カントク! 日向主将! 火神! 黒子~っ!
「そうだ。せっかく東京に来たんだから、実家に帰ろうかな。君も一緒だよ。光樹」
「……念の為訊きますけど……両親には何と?」
 友達だよな、友達だと言ってくれ!
ところが、赤司は笑顔であっさりとオレのささやかな希望を打ち砕いた。
「何言ってるんだ、光樹。恋人に決まっているじゃないか」
「オレ帰ります」
「逃がさないよ」
 赤司がぐっとオレの腕を引っ張った。急に引っ張られたおかげで、オレは赤司の顔に急接近した。
 てか、顔近ッ! 超近ッ!
「可愛い……」
 オレなんかちっとも可愛くねぇよ。オレなんかフツメンだし。
 つーか、ヤローに可愛いと言われたところで嬉しくも何ともないっ!
「ああ、このままだと理性が崩壊しそうだ。大人になるまで変なことはしないと誓ったのに」
 そう赤司は言った。今でも充分変です!
「君のことは既に父に話してある。一度呼んでおいでと言っていた」
「お父さんは何て……?」
 男が恋人なんて言ったら反対するだろう。それに賭けるしかないっ!
「一度会いたいと言っていた。大丈夫。父はそういうのには理解がある方だから」
 全然大丈夫じゃないんですけど……。
 オレはずるずると赤司に連れられて行った。
 天帝に敵うわけがない。こうなったら、赤司がオレに飽きるまで待つしかないだろうな……。オレは半分諦めの境地だった。

後書き
可哀想に……降旗クン……。
これも夏に書いた小説です。久しぶりに読んだらうけた……。
2014.12.7

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