正義の味方カールマン

 これは、中学時代に書いた、当時の愛猫カールを元にした物語です。
 この話のモデルとなったカールは、1999年に他界しました。
 カールマンよ、永遠なれ。

 に星――
 この星にカールという猫がいた。
 カールはものすごい静電気体質だったため、彼が歩くと、周りの電気製品はみなストップしてしまうのである。
 カールママが言った。
「カール、おまえが通ったから、この街はゴーストタウン同然になってしまったではないの」
「そ、そんにゃ。オレ、ただ歩いていただけにゃ」
「それがいけないのよ。おまえが強烈な静電気を発しながら歩いたおかげで、テレビも、ネオンサインも、あのカニ道楽のカニも、ぜーーんぶ止まってしまったのよーーーー!!!!!!」
「……にゃ、にゃんと」
 カールはに星を追い出されてしまいました。

 一年後――
 地球へと流れ着いたカールは、日本のとある公園の土管をねじろにしていた。
 時々ねずみを捕っては喰らい、ごみを漁り、カールは食べるために生きていた。
「はらへった……死……ぬ……」
 ニャーニャーと鳴く気力もなく、カールは虚ろな目で彷徨っていた。今日で何日食べてないだろう。目が回り、頭がぼんやりする。
 生ゴミは絶好のエサだったが、カラスがつつくため、網を張った大きな木枠の箱に守られている。
「あ、あれは!」
 視界ににぼしの袋が飛び込んできた。
 切り口が破れていて、中からにぼしがいくつか散らばっている。カールは大喜びでそれをがっついた。
 袋は空っぽになった。カールが取り敢えず満足していると、白い霧が辺りから噴き出してきて、白い髭の仙人に似た格好のお爺さんが現れた。
「にゃ、にゃんじゃ、おまえは」
 お爺さんは、充分勿体をつけてから、口を開いた。
「わしは、にぼしの神様じゃ」
「ニャぼしの神様?」
「そうじゃ。誰かに食われるのを待っとったのじゃが、まさか猫じゃったとは。まぁいい。お主の潜在能力を引き出してみせようぞ」
「洗剤能力?」
「やれやれ、お主は頭が悪いのぉ。つまり、その人、もとい猫が持てる力を最大限に発揮させることができるのじゃ」
「それって、いいことなのかにゃ」
「ああ。これからわしはおまえの中に入る。ぬおおおーーーーっ! かっ!!!」
「うにゃああああっ」
 体が熱くて熱くてたまらなくなり、カールは悲鳴をあげた。
 しばらくしたら落ち着いたが、いつもと違う感じがする。
 赤い風呂敷のようなマントに、金色に縁取られた深紅のゴーグル。それが水溜りに映った、カールの姿だった。カールはあ然としていたが、
「か……かっこいい……」
「どうじゃ。おまえは今日から正義の味方カールマンじゃ。もう、餓えを心配することはないぞ」
「すごい×3 にゃぼしの神様どうもありがとう」
 カールマンは天に向かって手を合わせた。
 そのときである。
「助けてぇーーーーっ!」
「なんにゃ?」
「急げ! カールマン! 緊急事態じゃぞ!」
 カール、もとい、カールマンが声のした方に駆けつけると、小さな黒猫が、野良猫どもに絡まれているところに遭遇した。
「いじめないで! いじめないでください! お魚を盗むなんて、ボクにはできません」
「うるせぇ! 三丁目にこの猫ありと呼ばれたトラゴローに逆らうとはふてぇ野郎だ。たたんじまえ!」
 正義の使徒、カールマンがそんなことを黙って許すはずがない。
「カールマン見参!」
「むっ、なんだ、こいつ」
「おまえらの悪事はしかと見てたにゃ。あ、しかと言っても、動物のしかじゃないにゃ」
「えーい、訳のわからん奴!野郎ども、やっちまえ!」
「オー!」
「えーい、必殺ネコパンチ!」
 カールマンの一撃で、トラゴローの子分Aがやられた。
「むっ、なかなかやるな」
「今度はネコキックだ! それっ!」
 しかし、調子に乗り過ぎたカールマン、キックが空振りしてひっくり返ってしまった。
 あわれ、カールマンは、野良猫どもに袋叩きに……
「いてっ! いていてっ! なんてことすんにゃよー!!!」
 カールマンの怒りのパワーは、静電気となって毛皮に溜まる。
 ビリビリビリビリッ!
「でででででっ! なんじゃこりゃあ!」
 子分たちはびっくりして、カールマンから離れた。
「今じゃ! カールマン!」
 にぼしの神様の声が聞こえた。
 カールマンは、『とお!』と宙に浮かぶと、ポーズを決めて叫んだ。
「今思いついた必殺技! 静電気ビーム!!」
 子分たちはその技であっという間にやられてしまった。しかし、右目に傷のある親分猫は、余裕たっぷりである。
「全員やられてしまったか。だがその程度の技では、俺は倒せんぞ」
「にゃんのっ! 静電気ビーム!」
 ところが、ボス猫は静電気を分厚い毛皮で吸い取ってしまった。
「ああっ!」
「ふふふ……さぁ、どうするね。カールマン」
「このままでは勝てない……」
 カールマンは心の中で祈った。
「にゃぼしの神様、オレに力を貸してください!」
 バリバリバリッ! カールマンの毛皮に静電気が溜まってきた。
「カールマンアターーーック!!」
 カールマンはボス猫に飛びついた。
「ぎゃああああああっ!」
 ボス猫は感電して黒焦げになってしまった。
「や……やった」
 カールマンはポーズを決めて呟いた。
「正義は勝つ!」
 勝利に酔っているカールマンに、黒猫が駆け寄ってきた。
「ありがとうございます。えーと、カールマンさん」
「いにゃいにゃ。礼には及びませんよ。それじゃ」
 カールマンが、電柱の立っている門を曲がると、変身がとけた。
 カールに戻ったカールマンは、公園に帰って行った。
 また明日から野良猫としての一日が始まる――

END

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