抱いてください義勇さん!

 俺は、義勇さんに宿に連れて行ってもらった。義勇さんの家も立派なのに。そして、そっちの方がくつろげるのに。でも、風情がある立派な宿だな。それに、あたたかみのある匂いがする。義勇さんが俺の為に取っておいてくれた宿なんだ……。
 義勇さんは堂々と入って行く。俺もちょこちょことついて行く。
 冨岡義勇さんは、俺の惚れた漢だ。今晩、契りを交わしてくれると言っていた。……嬉しい。
 何かちょっとほわほわとしていた。料理も美味しかった。善逸や伊之助が聞いたら、さぞかし羨ましがるだろうな。特に、「お前らだけ美味しそうなもん食いやがって」とか、伊之助には文句言われそう。
 それを想像して、俺はちょっと吹き出してしまった。 
 温泉に入った後、部屋に向かうと、布団が二つ並べてあった。ひとつで充分なのに。でも、男同士で何かやるなんて、普通は考えないよなぁ……。ここがただの連れ込み宿ではないことは、俺にもわかった。
 布団の上には義勇さんが端座していた。俺も義勇さんの隣に座る。
「炭治郎……」
 俺は、義勇さんに接吻される。初めての接吻だった。
「どうした? 赤くなって。のぼせたか?」
 義勇さんは冗談を言う。冗談だってちゃんと匂いでわかるんだ。……俺は、今から冨岡義勇さんのもの。覚悟しなきゃ。でも……怖い。鬼と戦っている時は全然怖くなかったのに、義勇さんと枕を共にするのが怖いだなんて……義勇さんに失礼じゃないか。
「震えてるぞ。炭治郎」
「え……あ……」
 俺は、自分が震えてる自覚すらなかった。
「これは……ちが……」
「もういい。怖がっているお前を抱くつもりはない」
 義勇さんは立ち上がった。
「隣の布団で寝る」
 しまった! 義勇さんを怒らせた! 俺は、一応覚悟してから臨んでいたつもりだったのに……義勇さん……。このまま義勇さんを諦めてしまったら、義勇さんはきっと絶対俺を二度と抱こうとはしないだろう。おそらく、死ぬまで。
 ここで義勇さんを逃してはいけないぞ。竈門炭治郎! 俺は、自分にそう言い聞かせた。
「義勇さん!」
 俺は義勇さんに抱きついた。
「抱いてください! 義勇さん!」
「炭治郎……?」
「今のは……期待で震えてたんです。だからどうか……どうか、俺を義勇さんのものにして……好きです……義勇さん……」
 義勇さんがふっと笑った気がした。鮭大根を食べた時のような、ううん、それよりもっと、優しい笑み。優しい匂い。
 嬉しそうな匂いがする。義勇さん、俺のこと、本当は抱きたかったんだ……。
 義勇さんは髪留めを外す。
「手加減はせんぞ。いいな」
「はい、はい!」
 俺は、義勇さんにまた接吻された。そして、静かに布団に寝かせられた。義勇さんが何度も俺に接吻してくれた。
「お前との接吻が、こんなに旨い味のするものだとは思わなかった」
「俺も……」
 俺はぽーっとなって、義勇さんの口づけに酔っていた。いつの間にか褌姿になっていたことにも気づかなかった。義勇さんが脱がせてくれたのだ。義勇さんも褌姿になっている。
 義勇さんの匂い、雄の匂いだ。何だかかぐわしい。きっと女の人ならころっと参ってしまうだろう。現に俺だって既に参ってる。義勇んの匂いに。義勇さんの愛の技術に。
 褌も外されてしまった。俺のはぎんぎんに昂っていた。
「元気だな。炭治郎」
 義勇さんは俺の半身に指を絡ませた。熱い。冨岡さんの指が熱い。絶頂に達するかと思うと、ふい、と逸らされてしまったり。俺は焦らされて頭がおかしくなりそうだった。
 ダメだ。もう、我慢出来ない!
「来てください! 義勇さん!」
「焦るな。炭治郎。このままでは辛いだろう。一旦抜いてやる」
 そう言って、義勇さんは落とし紙を俺の先端に当て、ぐっと俺の半身を握る。先端をこすられると、俺はついに達してしまった。
 ふぁ……あ……こんなに気持ちのいいのって、初めて。義勇さんは、俺の放った精を紙で丹念に拭き取る。そして、人差し指と中指を舐め始めた。
「な……何してるんですか? 義勇さん……」
「炭治郎。お前を傷つけたくない。けど、少し辛くなるかもしれないから我慢しろ」
 そう言って、義勇さんは言うのも憚られるあの場所に指を進入させた。
「うっ!」
 辛くはないが違和感はある。義勇さんの指だ。そう思ったら、少し楽になったけど。
「そうだ。力を抜け。上手いぞ」
 義勇さんに褒められて、俺は思わず笑みをこぼしてしまった。ある場所に指が触れると、電流が走ったような思いがした。
「あっ!」
「いい声だ。炭治郎」
 俺は、義勇さんの指だけでとろとろに蕩けてしまった。俺のもまた、反応を始めている。これは、義勇さんが入って来たら、一体どんな感じがするんだろう。嬉しくて……怖い。
 義勇さんは、経験はあるのだろうか。あってもおかしくはない。前に訊いた時にははぐらかされてしまったが。
「済まんな。俺も限界だ」
 そう言って、義勇さんも生まれたままの姿になった。俺は今日、義勇さんとお風呂に入ったから、義勇さんが予想通り筋肉質なのも知っている。義勇さんは隠そうとしなかったので、男根が雄渾なのも知っている。
 あれが、俺の中に入るのか……。
 ちょっと、びくついてしまう程、義勇さんのは大きくなっていた。義勇さんは、俺が辛いだろうと言っていたが、今まで我慢していた義勇さんはもっと辛かっただろう。
 きっと、絶倫なんだろうな。
「入るぞ。お前の中に」
 義勇さんはぐっぐっと前進した。俺は慣らされていたので、違和感と、少し痛みがある他は、特に苦痛も感じなかった。ああ、今、俺の中に義勇さんがいる。義勇さん、気持ちいい……。繋がった部分から、快感が、快楽が流れ込んできた。
「気持ちいいです、義勇さん」
「ああ、俺もだ……」
 義勇さんは俺を抱きしめたまま、しばらく動かないでいた。寝ちゃったのかな、と心配したが、義勇さんは起きていた。どくん、どくんと義勇さんの半身が脈打つのが感じられる。
「動いていいか? 炭次郎」
「はい!」
「いい返事だ」
 笑ってから、義勇さんはゆっくり動き始めた。ああ、義勇さん。俺をもっと義勇さんでいっぱいにしてください。もっと、もっと――。俺はぎゅっと義勇さんを抱きしめた。義勇さん、もっと早く動いてください。その想いが通じたのか、義勇さんの動きが早くなった。
「あ、あっ……!」
 電流が走ったどころではない。電流に打たれ続けたような快感が俺を襲う。きっと俺は、義勇さんに抱かれる為に生まれてきたんだ。
「炭治郎、俺も、こんな快感は初めてだ。お前は俺に抱かれる為に生まれたような体をしている。好いた相手とのまぐわいがこんなに気持ちのいいものだったとは……」
 義勇さん、まだ精を出してもいないのに、こんなに悦んでくれるなんて。それに、ああ、義勇さんの台詞はそのまま、俺の心の声。俺の全身が、義勇さんを好きだと言ってる。
「行くぞ。炭治郎」
 そして、また動きが早くなった。俺は泣いていた。悦楽の涙だ。
「ああん……義勇さん、義勇さん……」
「……炭治郎。お前の中に、俺を、流し込んでいいか?」
「はい!」
 雄の匂いが濃厚になった。俺がその匂いに酔っていると。熱い液体が俺の体内に流れ込んで来た。何度も、義勇さんを感じた。俺は不自然だとも汚いとも感じなかった。
 義勇さんが、この中にいる。それだけで、俺は満足だった。義勇さんも満足そうな表情と匂いをしている。
 俺は、義勇さんに気に入ってもらえたんだ。良かった……。俺の体で、義勇さんも快楽を覚えていてくれてるといいんだけど……。義勇さんは汗みずくだった。
「素晴らしかった。炭治郎」
「いえ、俺の方が……また、抱いてくれますか?」
「いや、あのな……?」
 義勇さんが言いにくそうにしている。どうしたんだろう。
「義勇さん、駄目ですか?」
 駄目だろうな……やっぱり義勇さんには女の人が似合うだろうし……だが、義勇さんが言ったことは、俺が心配したことではなかった。義勇さんは耳元で囁いた。
「お前を求めて、俺のがまた硬くなってんだ……」
「あ……」
 そういえば、体内の義勇さんは萎えたような感じがしない。
「もう一戦、いいだろうか」
「はい!」
 義勇さんは予想通り絶倫だった。俺だって体を鍛えているけれど、義勇さんには敵わない。俺はもうとろとろに蕩けていた。色仕掛けも出来るな、義勇さん。そんなこと、絶対させたくないけど。
 俺達が交わり続けている間に、もう日の光が室内に差し込んできた。長い長い夜だった。
「もう朝か……」
 義勇さんは俺の肩を軽く噛んだ。
「痛っ!」
「痛いか? この痛みは、俺がお前の体を予約すると言うことだ。また抱かせてくれるな。炭治郎。今度は震えないでいてくれ。俺は、お前が嫌がっていると勘違いするところだったんだからな」
「はい……」
「眠いだろう。今日はこのまま、寝かせておいてやる」
 はい、義勇さん。初めての快楽が予想以上だったおかげで、俺は疲れてもいた。射精した時特有の、気だるげな感じもあった。義勇さんの匂いに包まれながら、俺は幸せな眠りについた。

後書き
今回も18禁です。がっつりエロです。
どうも、この小説はさぶのようです。さぶ漫画ってあまり読んだことないけど、光栄の限りであります。
私が知ってるのは、あの伝説の「うほっ!いい男」「やらないか」の漫画だけですが。しかも、原作は読んだことない……。
2020.09.12

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