ニールの明日

~間奏曲~または第三十ニ話

ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。

深緑色の髪のアレルヤは、水滴に意識を集中させ、発狂するのを防ごうとする。彼は手足や口を拘束具で戒められていた。体は椅子に括りつけられている。ともすれば、気もそぞろになってくる。銀色の瞳の焦点が合わない。
(刹那……ロックオン……)
仲間のガンダムマイスター達。
(ハレルヤ……マリー……)
自分の半身と初恋の女性。
そして。
(ティエ……ティエリア……)
現在の恋人。もうしばらく会っていない。
アレルヤには水滴が落ちる音しか聴こえない。

ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。

「アレルヤ!」
顔に垂れかかった茶髪で右目に眼帯をした男が明るく言った。
「ロックオン!」
「久しぶりだな」
「生きてたのか?」
「ああ、心配かけてすまなかったな」
「死んだとばかり思ってたのに……」
「俺も、これで死ぬんだなとばかり思ってたよ。でも、今は生きていたい。せっかく助けてもらった命だ、大切にしたい。お前さんも難儀だろうが……諦めるんじゃないぞ」
「うん……うん……」
涙が顔に幾筋もの痕をつけた。
「それから、ティエリアは元気だぜ。刹那もな。じゃ」
「待ってくれ。ロックオン……!」

アレルヤはそこで目が覚めた。いつもの独房の中でだった。
(ロックオン……)
彼が生きてる夢を見るなんて、僕はとうとう狂ってしまったのだろうか。それならば狂うのも悪くない。
それにティエリアは元気だって。刹那も。
(ティエリア……)
歓喜の涙がほとばしった。アレルヤはそれを止められないし、止めようともしなかった。
(神様……!)
感動の中で神の名を心の中で呼んだ。

ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。
水滴の音まで彼を祝福しているかのようだった。

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